粒子と反粒子
少し前のページで物質を構成する粒子であるクォークとレプトンについて学びました。
実はそれらの粒子にはそれぞれ反クォークと反レプトンと呼ばれる仲間がいます。
クォークと反クォーク、レプトンと反レプトンはそれぞれ粒子と反粒子という関係にあります。
ここでは反クォークや反レプトンといった反粒子について学んでいきましょう。
クォークとレプトンにはとっても似た性質を持った仲間が存在します。
例えば、電子と陽電子を見てみましょう。
上の図からも分かるように、電子と陽電子は電荷の値が反対(プラス1とマイナス1)になっていますが、質量やスピンなどの量は全く同じです。
このように電荷が反対でそれ以外の性質が全く同じ粒子は粒子と反粒子の関係にあると言います。
上の例では、電子が粒子で陽電子が反粒子です。
クォークの反粒子のことを反クォーク、レプトンの反粒子のことを反レプトンと言います。
クォーク・反クォークの関係にある粒子とレプトン・反レプトンの関係にある粒子たちを下の図にまとめます。
対生成 と 対消滅
粒子と反粒子はよく似た性質を持っているので、この2つが出会うと対消滅(ついしょうめつ)という反応が起こったり、その逆の反応である対生成(ついせいせい)という現象が起こったりします。
ここではそれらの反応についてみていきましょう。
対消滅
まず対消滅(ついしょうめつ)についてみていきましょう。
上の図のように電子とその反粒子である陽電子が左から飛んでくる状況を考えます。
やがて、2つの粒子はぶつかり、消えてしまいます。これが対消滅です。
この時、電子と陽電子が持っていたエネルギーを持った光子、つまり光が出てきます。
対消滅は電子と陽電子以外の粒子・反粒子の組み合わせでも起こります。
例えば、アップクォークと反アップクォークも対消滅を起こし、光を放出して消えてしまいます。
対生成
次に対生成(ついせいせい)についてみていきましょう。
この反応は対消滅の逆の反応です。
対消滅の時は粒子と反粒子から光子が出てきましたが、今度は逆に光子が飛んでくる状況を考えましょう。
この光子が十分なエネルギーを持っていれば、電子と陽電子のような粒子と反粒子のペアに変身することができます。
この反応のことを対生成といいます。
物質 と 反物質
私たちの身の回りの物質がクォークとレプトンからできているのと同じように、
反クォークと反レプトンからできた物質も考えることができます。
このように、反粒子からできた物質のことを「反物質」と呼びます。
例えば、上の図のように反アップクォークと反ダウンクオークからできた反陽子と反中性子を考え、その2つからできた原子核の周りを電子の反粒子である陽電子がまわっているような原子を考えることができます。
このような反物質は考えることはできても、実際に宇宙に存在しているわけではありません。
なぜでしょうか?
その答えは上で説明した対消滅と関係しています。
昔の宇宙はとっても熱く、このような時期には粒子も反粒子もたくさん存在したと考えられています。
熱い宇宙では対消滅と対生成がくり返され、粒子と反粒子が消えて光になったり、光から粒子と反粒子のペアができたりしていました。
時間が経って宇宙が冷えてくると、対生成は起こりづらくなり、対消滅だけが起きるようになります。
この時、粒子よりも反粒子の方が少し多かったりすれば、反粒子だけが完全になくなり、その後の宇宙には粒子だけが残ります。
もちろん、今の宇宙でも対生成を利用して反粒子を作りだすことができます。
実際、人類も加速器(かそくき)と呼ばれる装置を利用して大きなエネルギーを持った光子から反粒子を生み出し、その存在を確認しています。
また、大きなエネルギーを伴う天体の現象においても反粒子は作られています。
しかし、こうして作られた反粒子はすぐに粒子と対消滅をしていなくなるため、粒子のように安定して存在することはできません。
このように反粒子はすぐに粒子と対消滅を起こすので、反物質が身の回りに存在することはありません。