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ヒッグスは質量を与える

​クォーク、レプトン、ゲージボソンの次はヒッグスについて学びましょう。

​この粒子はこれまでに見つかっている素粒子の中では一番最後に発見されました。

ヒッグスは素粒子たちに質量を与える役割を果たします。

ヒッグスが素粒子に質量を与える仕組みは「ヒッグス機構(きこう)」として知られており、

これは「対称性(たいしょうせい)の破れ」と呼ばれる現象と関係しています。

​まずは対称性の破れとはどのようなものなのかを学んでいきましょう。

soryushi_card_diagram.007.png

宇宙ができてすぐの頃は、上の図の左側の絵のようにヒッグスはポテンシャルと呼ばれる山の上にいます。宇宙の中に実際に山があるわけではなく、ただのイメージです。

この図を上から見て、それを回転させてみましょう。

​適当な角度だけ回転させても、回転の前と後で形は変わりません。

このように、回転のような操作をしても状態が変わらないとき、その状態には「対称性がある」と言います。

ヒッグスがポテンシャルの頂上にいる状態のときには対称性があります。

​宇宙ができてから少したつと、上の図の右側の絵のようにヒッグスはポテンシャルを転がり落ちてしまいます。

この図を上から見て、さっきと同じように回転させてみましょう。

適当な角度だけ回転させた時、ヒッグスの位置がもとの位置からずれてしまい、回転の前と後で状態が変わってしまいます。

つまり、ヒッグスがポテンシャルの底に落ちたあとは対称性がなくなってしまいます。

このようにもともとあった対称性が状態の変化によってなくなってしまう時、「対称性が破れる」と言います。

​これから説明するように、対称性が破れると一部の素粒子は質量を獲得します。

soryushi_card_diagram.008.png

質量とは簡単に言うと「物の動きにくさ」のことです。​

軽いものは動かしやすく、重たいものは動かしにくいですよね。

ヒッグスがポテンシャルの頂上にあって対称性がある時、

素粒子たちは上の図の左の絵のように自由に動き回ることができます。

この時、素粒子たちはとっても動きやすいため、動きにくさを表す質量はゼロです。

ヒッグスがポテンシャルの底に落ちて対称性が破れると、

上の図の右の絵のように素粒子たちはヒッグスに邪魔されて動きにくくなります。

動きにくくなるということは質量がゼロではなくなるということです。

 

どのくらい動きにくくなるかは、素粒子によって異なります。

例えば、トップクォークはとっても動きにくくなるためとても大きな質量を獲得しますが、

電子は対称性が破れても比較的動きやすいので質量は小さいです。

光子のように対称性が破れても動きにくくならずに、質量がゼロのままの素粒子もいます。

すでに紹介したように、ヒッグスによって対称性が破れ、一部の素粒子に質量が与えられる仕組みのことを「ヒッグス機構」と言います。

​ちなみに、「ヒッグス」という名前はヒッグス粒子の存在を予言したピーター・ヒッグス博士の名前に由来しています。

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